子育てをしながら看護師として働くことは、想像していた以上に大変でした。
仕事も頑張りたい。
子どものこともちゃんと見たい。
家のこともできるだけ回したい。
そう思って毎日を過ごしていたけれど、気づけば心の中で何度も思っていました。
「もう、無理かもしれない」
周りから見れば、いつも通り働き、家に帰って普通に子育てをしているように見えていたと思います。でも実際の私は、いつもどこかで息切れしていました。
仕事が終わっても、私の一日は終わらなかった
看護師の仕事は、勤務中ずっと気を張っています。患者さんの変化に気づけるように、ミスがないように、次に何をするべきかを考え続ける毎日。勤務が終わるころには、身体も頭もくたくたでした。
でも、家に帰っても休めるわけではありません。
玄関を開けた瞬間から、子どもの相手、夕飯、お風呂、寝かしつけ、翌日の準備が始まります。座る間もなく動き出して、気づいたら夜になっている。
「少しだけでいいから、何も考えずに座りたい」
そんなふうに思う日もありました。仕事がやっと終わったはずなのに、私の一日はまだ終わらない。むしろ家に帰ってから、もうひとつの勤務が始まるような感覚でした。そのうち、心の中でこんな気持ちがふくらんでいきました。
「私だけ、ずっと休めていない気がする」
誰かに責められたわけではありません。でも、家の中で止まらずに動いている自分を見ていると、どうしてもそう感じてしまうのです。
母親だから自分がやらなきゃ、と思い込んでいた
今振り返ると、私は「母親だから自分がやらなきゃ」と思い込みすぎていたのだと思います。
家事が残っていれば、自分が動かなきゃと思う。
子どものことも、自分が一番わかっていなきゃと思う。
家族に頼る前に、まず自分で抱え込んでしまう。
誰かにそう言われたわけではないのに、自然とそう考えていました。
「これくらい、私がやればいい」
「みんなも疲れているし」
「母親なんだから、ちゃんとしなきゃ」
そんな言葉を、自分で自分にかけ続けていた気がします。
本当はつらい。
本当は手伝ってほしい。
本当は少し休みたい。
でも、家族にも職場にも弱音を吐けなくて、平気なふりをしていました。看護師として働いている自分、母親として家を回している自分、そのどちらも崩してはいけないような気がしていたのです。
優しくできない自分がつらかった
限界が近づいていると感じたのは、子どもや家族に優しくできない日が増えたときでした。
本当は、子どもの話をゆっくり聞いてあげたい。
笑顔で「おかえり」と言いたい。
寝る前に穏やかな気持ちで過ごしたい。
でも現実は疲れすぎていて、ちょっとしたことでイライラしていました。
「早くして」
「今は無理」
「あとにして」
そんな言葉を言ったあとで、すぐに後悔します。
「なんでこんな言い方をしてしまったんだろう」
「本当は怒りたいわけじゃないのに」
「こんなお母さんでごめん」
看護師として人に寄り添う仕事をしているのに、家では一番大切な人たちに余裕を持って接することができない。そのことが、何よりつらかったです。
ある日、心の中でふっと思いました。
「もう全部投げ出したい」
それは本当に何もかも捨てたいというより、それくらい心に余裕がなくなっていました。頑張りたい気持ちはあるのに、心も身体も追いつかない。そのギャップが、どんどん苦しくなっていきました。
全部ちゃんとやる、を少し手放した
そんな毎日の中で、少しずつ思うようになりました。
「全部ちゃんとやるのは、無理かもしれない」
最初は、その言葉を認めるのが怖かったです。ちゃんとできない自分を認めるようで、負けたような気持ちにもなりました。
でも、本当はちがいました。
全部を完璧にやろうとして、自分が壊れそうになっていた。家事も育児も仕事も、すべて同じ熱量で抱え続けることのほうが、ずっと危なかったのだと思います。
そこで私は、仕事の日は家のことを最低限でよしとするようにしました。
夕飯が簡単でもいい。
部屋が少し散らかっていてもいい。
洗濯物がその日に全部片づかなくてもいい。
最初は落ち着きませんでした。でも少しずつ、「完璧じゃなくても生活は回るんだ」と思えるようになっていきました。
家のことを全部きれいにこなすより、自分が倒れないこと。
家族に優しくできる余裕を少しでも残すこと。
これが私にとって大切だったのだと気づきました。そして、1つ1つ手放していくと、私自身も子供たちも、明らかに笑顔が増えていきました。
看護師を続ける形は、ひとつじゃない
子育てと看護師の両立がつらくなったとき、私はどこかで「辞めるか、我慢して続けるか」の二択で考えていました。でも、本当はそれだけではありません。
夜勤のない働き方を選ぶこと。
時短やパートなど、時間を調整できる働き方に変えること。
正社員やフルタイムにこだわりすぎないこと。
そう考えたとき、少しだけ気持ちが軽くなりました。
「看護師を続ける形は、ひとつじゃないのかもしれない」
そう思えたことは、私にとって大きな転換点でした。もちろん、働き方を変えることには不安もあります。収入のこと、職場への申し訳なさ、自分のキャリアへの迷い、考えることはたくさんあります。
それでも、「今の形で頑張れないなら、もう看護師は無理」と決めつけなくていい。自分と家族の生活に合う形を探してもいいのだと思います。
つらいのは、努力不足ではない
子育てと看護師の両立がつらいと感じると、自分を責めてしまうことがあります。
「もっと頑張れる人もいるのに」
「私の要領が悪いだけかもしれない」
「母親なのに、看護師なのに、ちゃんとできていない」
私も何度もそう思いました。でも、今は少しちがう見方をしています。
つらいのは、努力不足だからではありません。
弱いからでも、母親失格だからでもない。
ただ、抱えているものが多すぎるのかもしれません。
仕事も、子育ても、家のことも、全部ひとりで背負い続けるのは本当に大変です。子育てをしながら看護師として働くことがつらいなら、それはあなたの努力不足ではありません。今の働き方が、生活に合わなくなっているだけです。辞めるか、我慢するかだけでなく、夜勤なし、時短勤務、パート、転職など、看護師を続けていく形はいくつもあります。無理だと思ったときは、働き方を見直してもいい、全部ちゃんとやることを、少し手放してもいいのです。
看護師を続ける形は、ひとつではありません。子育てをしながら働く自分が、少しでも息をしやすい形を選んでいい。
私は、あの頃の自分にそう伝えてあげたいです。


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